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投稿者:高木澄典

令和3年度税制改正大綱(M&A税制)

令和2年12月21日に令和3年度税制改正大綱が閣議決定されました。令和3年度税制改正大綱のうち株式対価M&Aを促進するための措置の創設について解説したいと思います。

①株式対価M&Aを促進するための措置の創設
法人が、会社法の株式交付により、その有する株式を譲渡し、株式交付親会社の株式等の交付を受けた場合には、その譲渡した株式の譲渡損益の計上を繰り延べることされています(所得税についても同様とすることとされています。)(令和3年度税制改正大綱)。
(注1)対価として交付を受けた資産の価額のうち株式交付親会社の株式の価額が80%以上である場合に限ることとし、株式交付親会社の株式以外の資産の交付を受けた場合には株式交付親会社の株式に対応する部分の譲渡損益の計上を繰り延べる。
(注2)株式交付親会社の確定申告書の添付書類に株式交付計画書及び株式交付に係る明細書を加える(株式交換及び株式移転についても同様とする。)とともに、その明細書に株式交付により交付した資産の数又は価額の算定の根拠を明らかにする事項を記載した書類を添付することとする。
(注3)外国法人の本措置の適用については、その外国法人の恒久的施設において管理する株式に対応して株式交付親会社の株式の交付を受けた部分に限る。

②株式交付制度

株式交付制度は2019年に会社法改正により創設され、2021年3月から施行される新しい組織再編の手法です。株式交付制度の定義は「株式会社が他の株式会社をその子会社(法務省令で定めるものに限る。第774条の3第2項において同じ。)とするために当該他の株式会社の株式を譲り受け、当該株式の譲渡人に対して当該株式の対価として当該株式会社の株式を交付すること」とされ(改正法2条32号の2)、株式会社が(買収会社)が他の株式会社(被買収会社)を子会社化するために、自己株式を他の株式会社(被買収会社)の株主に対して交付する制度です。似た組織再編の手法として株式交換制度がありますが、株式交換制度は被買収会社の完全子会社を目的としており、株式交付制度により株式を対価として部分的な買収が可能になりました。

③株式交付制度の税法上の取扱いの明確化

令和3年度税制改正大綱により株式交付制度による株式の譲渡損益は繰り延べられることが明確化されました。会社法改正、税制改正により株式交付制度による組織再編の活性化が進み企業の収益力向上が期待されます。

投稿者:高木澄典

コーポレートガバナンス・コード改定

日本経済新聞(2020/12/6 2:00配信)によると、金融庁と東京証券取引所が2021年春に企業統治指針(コーポレートガバナンス・コード)を改定し、東証の市場再編で現在の第1部を引き継ぐ新市場に上場する企業には社外取締役を現行の取締役2人以上から取締役3分の1以上とするよう求め、ガバナンスの透明性向上を促すとのことです。現行のコーポレートガバナンス・コードを踏まえ、社外取締役の役割について書きたいと思います。

コーポレートガバナンス・コード(2018年6月1日 株式会社東京証券取引所)によると、上場会社は、社外取締役には、特に以下の役割・責務を果たすことが期待さることに留意しつつ、その有効な活用を図るべきであるとされています(原則4-7 独立社外取締役の役割・責務)。(ⅰ)経営の方針や改善について、自らの知見に基づき、会社の持続的な成長を促し中長期的な企業価値の向上を図る、との観点からの助言を行うこと(ⅱ)経営陣幹部の選解任その他の取締役会の重要な意思決定を通じ、経営の監督を行うこと(ⅲ)会社と経営陣・支配株主等との間の利益相反を監督すること(ⅳ)経営陣・支配株主から独立した立場で、少数株主をはじめとするステークホルダーの意見を取締役会に適切に反映させること 

また、今回の改定に影響する事項として、独立社外取締役は会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に寄与するように役割・責務を果たすべきであり、上場会社はそのような資質を十分に備えた独立社外取締役を少なくとも2名以上選任すべきであるとされています(原則4-8 独立社外取締役の有効な活用)。改定により独立社外取締役が取締役2人以上から取締役3分の1以上に変更され、ガバナンスの透明性が向上します。

社外取締役の役割・責務のうち、(ⅰ)経営の方針や改善について、自らの知見に基づき、会社の持続的な成長を促し中長期的な企業価値の向上を図る、との観点からの助言を行うことに関して、税理士の顧問業務に通じるところがあります。顧問税理士は社外取締役ではありませんが、アドバイザーとして企業の成長に貢献できるように自己研鑽に励みたいと思います。